’26. K-⑨

 皆さん、お元気ですか? 来生たかおです。

 名古屋のライブを終え、したためています。この日、激しい雨の中、たくさんの方が足を運んでくれたこと、とても嬉しかったです。

 5月下旬から始まった「50th Anniversary Concert Tour 2025-2026 ~The Song~」も、早いもので、10月2日の札幌、4日の秋田・大曲を残すのみとなりました。これまでのライブにお越しいただいた皆さん、誠にありがとうございました。ツアーとしては最後になりますが、残り2会場、精一杯頑張りますので、是非、いらしてくださいね。

 さて、久しぶりになりますが、新曲「夢と現実」が10月1日にシングルとして配信リリースされます。そして、この曲を含むアルバム(2枚組になると思います)が12月に発売予定です。今回のアルバムは、2004年以降のオリジナル曲からセレクトしたベスト盤で、50年前に書いた未発表曲が1曲入っています。お手元に届く日を楽しみにしていてください。

 名古屋のライブでもお話ししましたが、お勧めの映画「敵」を紹介します。観た方もいらっしゃると思いますが、とてもいい映画でした。原作は筒井康隆、脚本・監督は吉田大八、主演は長塚京三さんです。観終えて思ったのは、長塚京三さん以外の役者さんでは成り立たない映画だということです。すこぶる適役でした。

 長塚京三さん演じる主人公の渡辺儀助は、フランス文学を専門に教えた77歳の元大学教授で、妻に先立たれて20年、教授を辞めて10年、都内にある実家の古い日本家屋で一人つつましく暮らしています。預貯金と、たまにある講演、執筆でわずかな収入を得ながら、あと何年生きられるのかを計算し、平和に過ごしています。映画の前半は、こうした儀助の日常を静かに描きます。朝は決まった時間に起きて、ご飯を炊き、顔を洗い、歯磨きをして、料理して、食べたあとにコーヒーを挽いて飲み、片づけをして、洗濯、掃除をして、パソコンに向かって仕事をする。これがルーティンなのですが、すごくいい。特に料理がいいんです。いろいろなものを作るのですが、とても美味そうに見える。この映画は全編モノクロなのですが、なぜか美味しそうに見えるんですよね。また、セリフが平易な言葉でいい。しかし、後半になって、様相が変わってきます。不可解なことが起こるんです。

 ある日、パソコンに向かって仕事をしていると、突然、ジャンクメールのようなメッセージが入ってきます。「敵について」というメッセージが書かれていて、最初のうちは、パソコンのゴミ箱に捨てているのですが、それから頻繁に「敵がやってくる。早く逃げろ!」などというメッセージが送られてきて、このあたりから過去と現実が交錯してきます。妄想と現実が入り混じって、それまでの日々の暮らしにヒビが入る。ちょっとサスペンスっぽくなっていくのですが、結局のところ、「敵がやってくる」とはどういうことなのか、答えは観た人の解釈に委ねられます。

 名古屋のコンサートのときは、「僕はこう思う」とお話ししましたが、ここは言わないほうがいいですね。妄想と現実のところでは、元教え子への密かな欲望を抱きつつ自制していたこと、たまにいくバー「夜間飛行」でフランス文学を専攻する女学生にまんまと騙されて300万円を失ったこと、亡き妻から辛辣なことを言われたことなどが描かれます。なかなかの秀作だと思いますよ。

 それでは今日はこのあたりで。ご機嫌よう。

9月末日 来生たかお

2026

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